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寺尾聰と吉岡秀隆による緊迫の掛け合いシーンは見もの!樹木希林、高橋一生ら名優たちも共演した映画「半落ち」

2025.5.21(水)

寺尾聰が主演を務めた「半落ち」は、現役警察官の主人公が自身の妻を殺害してしまった事件の真相に迫っていくサスペンス映画だ。原作は「クライマーズ・ハイ」、「64(ロクヨン)」など数々の小説が映像化されている作家・横山秀夫のベストセラー小説。デビュー作「陽はまた昇る」で高い評価を得た後、「ツレがうつになりまして。」など数々の作品を手がけた佐々部清監督がメガホンをとった。

2004年に公開された本作は、名だたる俳優陣が素晴らしい演技を披露しているという意味でも見応えたっぷり。主演の寺尾をはじめとして、樹木希林、西田敏行、柴田恭兵、原田美枝子、伊原剛志、鶴田真由、高島礼子、國村隼、高橋一生、吉岡秀隆らが出演している。

寺尾が演じているのは、元敏腕刑事で現役警察官の梶聡一郎。"アルツハイマーを患った妻・啓子(原田)を殺害した"と梶が自首してくるところから物語は始まる。

寺尾といえば大ヒットした「ルビーの指輪」でおなじみの国民的シンガーとして知られるが、父親は「劇団民藝」の創設者でもあり、監督や演出家としても活躍した名優・宇野重吉。寺尾自身も俳優としてデビューしたキャリアの持ち主だ。もの言わずとも眼差しや顔の傾け方など表情ひとつで多くを語ってしまう演技に、唸らずにはいられない。

そして、梶に判決を下す裁判官・藤林を吉岡が好演。当時ブレイク前の高橋も物語の鍵となる人物として出演している点も見どころだ。

■時代を超えて刺さるテーマの中で、寺尾の間合いを活かす演技にしびれる

自首してきた警察官を演じる寺尾聰と、刑事役の柴田恭兵による取り調べシーン
自首してきた警察官を演じる寺尾聰と、刑事役の柴田恭兵による取り調べシーン

自首してきた梶の取り調べに当たることになったのは捜査一課の刑事・志木(柴田)。死にたがっていた妻を殺めたことは認めるものの、犯行から自首までの2日間について聞かれると固く口を閉ざす梶に、警察もマスコミも大騒ぎになる。

後輩刑事たちから人柄も含めてリスペクトされていた主人公・梶を演じた寺尾は、悲哀をたたえた瞳で警察署を見上げる冒頭のシーンから、その芝居で見る人を惹きつける。その後の志木からの取り調べでは伏し目がちだが、時折、悟ったような穏やかな表情を浮かべ、検察官・佐瀬(伊原)からの追及には、相手の目を真っすぐに見て短い言葉で答える。この演技における"間"を駆使して、演技力が問われる役どころを細やかに表現している。

■公判での寺尾と吉岡のヒリヒリするやりとり、樹木の芝居も見どころ

空白の2日間に梶が電車に乗っていたことが新聞で報道されたこともあり、裁判官の藤林は、自白は警察によって捏造されたものではないかと疑い、上司からその言動をたびたび注意される。

第2回公判の証人は梶の妻の姉(樹木)。アルツハイマーになった妹への想いを嗚咽しながら吐露する姉の姿は、演じる樹木の熱演が見る者の胸に突き刺さる。

真実に迫ろうとする佐瀬たちの想いを受け止めながらも、裁判でも何も語ろうとしない梶に、それまで誰も言わなかったある質問を投げかけるのが、介護状態の父親と妻と暮らす藤林だ。初めて顔に動揺が走る梶を演じる寺尾と、藤林の苦悩と苛(いら)立ちをにじませる吉岡の演技は、本作を波のように揺らす役目を果たしている。

梶が起こした事件の真相を追うサスペンスを、人間味溢れるドラマと俳優たちの名演とともにじっくり味わってほしい。

文=山本弘子

放送情報【スカパー!】

半落ち
放送日時:2025年5月23日(金)21:00~、2025年6月3日(火)21:00~、2025年6月16日(月)16:35~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます