松坂桃李、寺尾聰へ溢れる想いと尊敬の念「僕には難しいかもしれないですけど...」映画「父と僕の終わらない歌」インタビュー
2025.5.19(月)

寺尾聰と松坂桃李がダブル主演を務める映画「父と僕の終わらない歌」が5月23日(金)に全国公開される。
実話をもとにした同名本を原案とした本作。レコードデビューを夢見るほど歌が大好きだった間宮哲太(寺尾聰)は、ある日アルツハイマーと診断される。息子の雄太(松坂桃李)は、父の発病を機に実家に戻り、哲太と向き合うことに。さまざまなことを忘れていく父親だったが、歌を歌うときだけ、いつもの哲太に戻るのだった。そんなとき...。
映画公開を前に、松坂にインタビューを実施。本作のことはもちろん、主演の寺尾のことや、俳優を続けるなかでの想いについても語ってくれた。

――寺尾さんと親子役を演じた本作。現場はどんな雰囲気だったのでしょうか?
「現場の空気は寺尾さんが作られていた印象がありますね。俳優部以外の各部署にも、穏やかに、フランクに、どの人にも分け隔てなく声をかけていらっしゃったのですが、その"柔らかさ"がどんどん現場全体に広がっていくような...温かい空気がずっと流れていた印象があります」
――今回、寺尾さんが歌唱するシーンもありました
「メディアには、アーティストとして活動されているお姿が出ていますが、寺尾さんが役者として歌を歌うシーンを拝見するのは初めてだったので、すごく贅沢で貴重な時間だったと思います」
――そんな寺尾さんと対峙するなかで、俳優として魅力的に感じたところを教えてください
「お芝居って、本来そうあるべきなのですが、全部心に来るんですよね。目が合うだけでも吸い込まれそうになりますし、声を聞くだけでも包み込まれる気持ちになりますし、僕なんかはとてもじゃないですけど真似できないものです」
――雄太を演じる際に意識したこと、難しかったことがあれば教えてください

「昔、お父さんに打ち明けていたことがあるのですが、それを自分のなかでまだ秘めているところがある、というのが一つ。もう一つは、寺尾さんの息子役として、自分がその空気に馴染めるように...というのを心がけていました」
――寺尾さんとの親子役だからこそ、意識する部分があるんですね
「寺尾さんのお芝居に対して、僕自身もしっかり呼応するような柔軟さを身につけなきゃいけないし、親子役だからこそ、パーソナルスペースまで飛び込めるぐらいの"レンジを利かせた感情の振れ幅"みたいなものをしっかりと持つようにしよう、と思っていました」
――雄太と通ずる部分や共感する部分がありましたら教えてください
「親子だからといって『なんでも話せる関係』ということではないと思うんです。特に父親と息子の関係性だと、"そこまで話すつもりはないけど"という、親子特有の恥ずかしさや、言いにくさみたいなものが、共通項としてあるなと思いました」

――松坂さん自身、お父さんとの印象的な思い出はございますか?
「『挨拶はちゃんとしなさい』という言葉は今でも残っています。それは"どの人に対しても"ですね。仕事場でも、家族、友達にも『挨拶はしっかりするように。そこから人間関係が始まるから』と教えてもらいました」
――俳優の業界はもちろん、どの業界に入っても大事なことですよね
「そうですね。その教えが今に生かされています」
――松坂慶子さん演じる母親・律子もふくめ、間宮家の親子関係について、松坂さんにはどう映りましたか?
「あのような両親に育てられたら、幸せだろうなと思います。遊び心を忘れない父親と、それを包み込んでくれる寛大な温かさを持った母親に育てられた子供というのは、それはそれは清らかな心を持つだろうなって(笑)」
――松坂さんのなかで印象的だったシーンはございますか?
「どのシーンもそうですが、寺尾さんとのラストシーンは特に感情を抑えきれませんでした。僕、お芝居をやらせていただいて15、16年ぐらいなのですが、こんなに感情が溢れてくる経験は生まれて初めてでした。それを寺尾さんに引き出していただきましたし、一瞬、お芝居を超えるような時間が流れました」

――作中、哲太がアルツハイマーとなりますが、松坂さんは、これまでアルツハイマーに対して、何か勉強したり、考えたりしたことはございますか?
「自分も家族を持ったことで、アルツハイマーや、年齢を重ねていくなかでかかってしまう病の可能性など、『子供に迷惑をかけないようにするにはどうしたらいいんだろう』と考えることがあるのですが、今回参加させていただいたことがきっかけとなり、より向き合うようになったと思います」
――本作の監督・小泉徳宏さんが生み出す作品の魅力や、小泉監督が作り出す世界観で素敵だなと思うところを教えてください
「今回扱っているテーマはとても重たいのですが、それを温かく晴れやかに、エンターテインメントを融合させることができたのは、やはり小泉さんの力なのかなと思います。こうしたテーマは、重たい気持ちになることがあるのですが、見終わったあと、こんなにもハートフルな気持ちにさせてくれるのは、小泉さんならではだなと思います」

――本作では、寺尾さんとの共演をはじめ、この現場でしか得られないものがたくさんあったかと思います。今回、経験値として得たもののなかで、印象的なことを教えてください
「先ほども触れましたが、寺尾さんとのラストシーンですね。演技のなかで、自分の感情がここまで溢れ出ることって今までなかったので、僕にとってはものすごくいい経験になりました」
――抑えきれないものがあったんですね
「止めどなく感情が溢れ出てくると言いますか...それを寺尾さんに引き出していただきました。寺尾さんのように感情を引き出せるような役者になるにはとても時間がかかりますし、僕には難しいかもしれないですけど、いつかそうなれるように頑張りたいなと思います」
――こうした経験を経ると、ご自身でも成長を実感する瞬間があるのでしょうか?
「そうですね。常に成長の連続ですね。僕のなかでは、ずっと階段が続いているような感覚があります。どの作品にも新しい刺激、出会い、再会、壁、みたいなものはあるので、そこで得られる経験値が、次の一段を上がるためのステップにつながるんだろうなと思います」
――やはり、俳優さんのような「正解のない仕事」って面白いんですね
「面白いと思います。不安も大きいし、手探りの部分はありますが、その分たくさんの可能性に満ち溢れている仕事でもあると思うので、すごく楽しいです」

取材・文・撮影=浜瀬将樹
ヘアメイク=古久保英人(OTIE)
スタイリスト=猪塚慶太
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