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花澤香菜×若山詩音が見つけた"実写吹替"の手触り 『双鏡 -Couple of Mirrors-』の現場で深まった信頼

2025.5.15(木)

『双鏡 -Couple of Mirrors-』日本語吹替を務めた花澤香菜と若山詩音
『双鏡 -Couple of Mirrors-』日本語吹替を務めた花澤香菜と若山詩音

多くの人をエンパワーする、女性同士の間に生まれる愛情や友情を描いたアジア発の実写作品を日本語版で届ける新ブランド「aLiL(アリル)」。その第1弾として配信されたタイ発のGLドラマ『ギャップ・ザ・シリーズ』に続き第2弾作品として登場したのが、bilibili動画で総再生回数1.5億回超を記録した中国発の話題作『双鏡 -Couple of Mirrors-』だ。

華やかな社交界の裏側で交差する欲望と裏切り、そして2人の女性が築く特別な絆。サスペンスとシスターフッドが交錯する物語を、日本語吹替版で演じるのは、実力派声優の花澤香菜と若山詩音。アニメとは異なる実写吹替の難しさに挑みながら、繊細な感情をすくい取り、物語に命を吹き込んだ2人が、作品との出会いから演技のアプローチ、そして心通わせた掛け合いの裏側までを語ってくれた。

左から花澤香菜、若山詩音
左から花澤香菜、若山詩音

――本作に出演が決まった時の率直な気持ちを教えてください

花澤「中国のアニメやゲームにはこれまで関わることがあったんですけど、実写のドラマを吹き替えるのは今回が初めてなんです。最初は何もわからない状態だったんですけど、1話を見てみたら、もう『昼ドラじゃん!』って(笑)。不倫とかサスペンスとか、すごくドロドロしていて、こういうお話は世界共通で愛されているんだなとちょっと安心しました。しかもレギュラーで参加できることがすごく嬉しくて、あまり吹替経験が多くない中で挑戦できるのがありがたかったです」

若山「私は、最初に作品のキービジュアルを見た時に、『これは一体どんな話になるんだろう?』と興味が湧いてきて。最初は"女性バディもの"だと聞いていたんですけど、いざ本編を観てみたら、1話から不倫だったり裏切りだったり、想像以上の展開でした。でもそれだけではなく、文化的背景もしっかりあって、すごく華やかで、ロマンを感じました。私も吹替の経験が少ないので、自分に務まるかなと、とても緊張していましたね」

――今回、共演が決まった時はどう思いましたか?

花澤「若山ちゃんとは『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』という作品でご一緒して以来、実はあまり共演の機会がなかったんです。その後は、『明日ちゃんのセーラー服』で共演したことはあったんですけど、収録で同じ現場になることが一度もなくて。だから今回、また一緒にお仕事ができると知って、本当に嬉しかったです」

若山「こんな近くで、収録しているところの声を実際に聞くことができて、そのお芝居を間近で拝見できるなんて、すごく贅沢な機会じゃないですか。なんて貴重な機会なんだろうって思いました」

花澤「今回の作品はシスターフッドものと聞いていたので、『イチャイチャできるのかな?』なんてちょっと期待していたら、実際にはあまりイチャイチャはなかったですね(笑)」

若山「スキンシップはあんまりなかったですが、本当に掛け合いをさせていただくのがすごく楽しくて、毎回すごく幸せな時間でした。自然とヤン・ウェイとしての会話に馴染んでいく感覚があって、その流れに身を委ねるのがすごく贅沢で、楽しいなとしみじみ感じていました」

――それぞれが演じた役について、どんなふうに感じましたか?

花澤「私が演じたシュー・ヨウイーは、作家としての仕事を持ちながら、家庭ではジョウ・ホンに守られて生きている、最初はすごく幸せそうな女性なんです。でも話が進むごとに、どんどん現実に直面して、自分自身で立ち上がらないといけない場面が出てきて。守られてるだけじゃなくて、内側に"芯の強さ"がある女性なんだなと。ヤン・ウェイといる時はお茶目でちょっと抜けてるところもあるんだけど、そのギャップがとっても魅力的だなと感じました」

――ヨウイーはすごくふわっとされているんですよね

花澤「そうなんです。一方で、記者の前で真実を語るシーンがあるんですけど、そういう場面では、彼女の覚悟や、これまで積み重ねてきた作家としての姿勢、いろんな想いが滲み出るように意識して演じていました」

――若山さんはいかがでしたか?

若山「ヤン・ウェイは、元傭兵というバックボーンがあるからこそ、最初はクールで無口な印象ですが、本当はすごく優しい子です。第2話のホン・メイとのエピソードだったり、その後のヨウイーを気遣う言葉だったり、細やかな感情がたくさん詰まっているんです。演じながら『この人は、本当は誰よりも人に寄り添いたい人なんだな』と思うようになりました。弱い立場にある人を守りたいという気持ちが、セリフや表情に滲んでいて、それを声でもきちんと表現したいと思っていました」

花澤「掛け合いもすごく楽しかったよね。詩音ちゃんが少し低めのトーンで演じてたのも新鮮で、そこに私のヨウイーが天然で絡んでいく感じが心地よかった(笑)」

若山「演じている中で、どんどんキャラクターに親しみが湧いてくるんです。最初は『この人はどんな性格なんだろう?』って探りながら入っていくのですが、段々自然と言葉が湧いてくるようになる瞬間があって。それが吹替の魅力でもあるのかなと思います」

『双鏡 -Couple of Mirrors-』でシュー・ヨウイーの吹替をする花澤香菜とヤン・ウェイの吹替をする若山詩音
『双鏡 -Couple of Mirrors-』でシュー・ヨウイーの吹替をする花澤香菜とヤン・ウェイの吹替をする若山詩音

――演じたキャラクターと、ご自身との共通点があれば教えてください

若山「私は年の離れた姉がいて、小さい頃から"妹ポジション"だったので、ヤン・ウェイのように、年下だけどチャキチャキしてるところはすごく共感できました。実生活では、姉がほんわかしている分、私の方がしっかり者に見られがちなんです。本当は姉の方がしっかりしているのですが(笑)」

花澤「ヨウイーが酔っぱらってるシーン、あれはちょっと似てるかもしれない(笑)。実際に酔って泣いたりはしないんですけど、人に構いたくなっちゃう感じとか、ちょっと重なって見えるところはありました」

若山「収録の様子を拝見していると、まるでヨウイーがその場に"生きている"かのように感じられるんです。花澤さんのお芝居とヨウイーの存在が、少しずつ、でも確かに重なっていくような感覚があって...。その様子が本当に美しくて、いつも感動してしまいます。私の中ではもう、花澤さんとヨウイーが完全に重なり合っています」

――アニメと実写吹替の違いや難しさはどこにありましたか?

花澤「やっぱり一番大きな違いは、リアルな人間の表情や呼吸にぴたっと合わせることが求められるところですね。アニメだと感情を少しデフォルメして、声で世界観を作っていくようなイメージなんですけど、実写は逆にいかに自然にその世界の中に入り込むかが大切で。そこを外してしまうと一気に"嘘"になってしまうから、すごく神経を使いました。しかも中国語のリズムと日本語って全然違うんですよね。口の動きもそうだし、言葉の抑揚も。長台詞も多いですし。地名とか役職名とか、一発で言えないようなこともあったんですけど、淡々としすぎないように、自分の中で波を作りながら、テンポを合わせつつ、考えながら演じていたところがありますね」

『双鏡 -Couple of Mirrors-』花澤香菜、若山詩音
『双鏡 -Couple of Mirrors-』花澤香菜、若山詩音

――吹替を拝見していて思ったのですが、お二人の声って、確かに花澤さんと若山さんの声なのですが、より"人間的"というか、セリフの一つひとつに感情がしっかり乗っているような印象を受けました

花澤「人物の表情も一緒に見ているからこそ、そう感じていただけたのかもしれません。私自身は、吹替だから特別に何かを変えるといった意識は、あまり持っていなくて。ただ、できるだけ自然な表現になるようには常に意識していますね。アニメの場合は、監督から『この部分はもう少し誇張してほしい』といった演出意図がある場合も多いので、そういった時はきちんとその方向に寄せて演じるようにしています」

若山「私は本当に、1話や2話の収録の時点では、うまくできないことも多くすごく悩んでいました。そんな中で、少しずつ自分なりのやり方や視点が見えてきたというか...そんな中で試すようになったのが、実際に動いてお芝居をしてみるという方法です。ヤン・ウェイの動きを自分でやってみることで、そこから出てくる声が映像とマッチしている感覚があったんです。もちろん、収録現場では音が立ってしまうので限られた範囲での試行になるのですが、自宅で練習する際などには、想像だけでは掴みきれない部分を、身体を動かして声を出してみることで調整するようになりました。このアプローチは、私にとっては吹替ならではの大きな発見だったかもしれません」

――最後に、本作の映像表現や世界観について、特に印象に残った部分を教えてください

花澤「食事のシーンが印象的でした。どの料理もとにかく美しくて、見た目だけで『絶対美味しいじゃん!』って思っちゃう」

若山「でもヤン・ウェイが作る料理は劇中では『味が微妙』っていう設定なんですよね(笑)」

花澤「そうそう(笑)」

若山「イベント業界の描写も新鮮でしたよね。ああいうビジネスの裏側も、ストーリーの一部としてきちんと描かれていて面白かったです」

花澤「そういう意味で、文化の違いが強く出ている作品ではあるけど、感情の流れとか、葛藤とかはむしろ普遍的で。『あ、こういう気持ちって世界共通なんだな』と思わせてくれるところがたくさんありました」

取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI

配信情報

『双鏡 –Couple of Mirrors–』
DMM TV、FOD、Prime Videoほかにて毎週金曜12:00より最新話を配信中