【菅井友香】"馬との絆" 乗馬、怪我、そして競馬番組MCとしての今
2025.5.15(木)

「好き」の気持ちを深く掘り下げ、新たな「好き」と出会うきっかけを届けるHOMINISの本企画。
今回登場してもらったのは現在は競馬番組『競馬BEAT』のMCとしても活躍する元櫻坂46の菅井友香。
物心つく頃から動物を愛し、初めてのポニー体験を機に"馬"という存在に心を奪われた菅井。小学生で乗馬を始め、やがて馬場馬術の競技にも挑戦。怪我や挫折を経ながらも、大学進学後も馬との時間を大切にし続けてきた。かつては背中を追い、信頼を築いてきた馬たちとの記憶を胸に、いまはメディアという新たなフィールドで"馬の魅力"を届けている。
HOMINISでは、そんな彼女のこれまでの歩みと、今も変わらぬ"馬への愛"についてじっくりと話を聞いた。競技者から伝え手へとフィールドを広げた菅井の"好き"と真摯に向き合う思いに迫る。

――菅井さんは子どもの頃から馬に親しまれていたと思いますが、そもそも馬との出会いはいつだったのでしょうか?
「物心がついた頃から、とにかく動物が大好きだったんです。家には猫が2匹いて、赤ちゃんの頃からその子たちと一緒に過ごしてきました。よちよち歩きの頃にはもう、猫の後を追いかけていたみたいで。家族で動物園に行くことも多くて、そこで初めて馬と出会ったんです。ポニーに乗る体験があって、そのときに感じた背中の揺れや、毛並みの温かさがすごく印象的で、自分の中に何かときめきのようなものが芽生えたのを覚えています。その後も動物とのふれあいは続いていて、小学生のときには近所の動物ふれあい施設に通ったり、図書館で動物に関する本を借りて読んだりしていました。特に馬は、図鑑で見るだけでも惹かれる存在で、『この大きな動物と心を通わせるって、どんな感じなんだろう?』と思っていたんです」
――「乗馬をやってみよう」と思ったきっかけは何だったんでしょうか?
「小学5年生のとき、仲の良いお友達が『今度から乗馬を習うんだよ』と教えてくれたんです。そのお友達のお母さんが私の母に『よかったら一緒にどうですか?』と声をかけてくださって。それが本当にありがたくて、そこから一気に現実味が帯びてきた感じがしました。でも実は、当時フィギュアスケートも再開しようかなと考えていたんです。そんなときに『どっちか選んで』と母に言われて、しばらく悩んだんですけど、最終的には『今までやったことがないことをやってみたい!』という好奇心が勝って、乗馬を選びました」

――最初に行った乗馬クラブはどんなところだったんですか?
「東京にある乗馬クラブで、少年団というジュニア向けの育成プログラムがありました。そこに入るためには、なんと面接が必要だったんです。小学5年生で面接って聞くとちょっと構えてしまうんですけど、そのときは『馬に会いたい!』という気持ちの方が強くて、緊張しつつも思いをしっかり伝えることができたと思います。ありがたいことに、無事合格をいただいて、そこから本格的な乗馬生活がスタートしました」
――乗馬初日のことは覚えていますか?
「はい、忘れられないです。想像していたよりずっと大きな馬が目の前にいて、思わず声が出ちゃったんですよね。馬って、写真や映像で見るよりもずっと存在感があって、迫力があるんです。でも不思議と、怖さよりも安心感の方が大きくて。『この子、優しそう』って思ったのを覚えています。先生の手を借りて、いざ背中に乗ってみたときに、目線がぐっと高くなって世界が変わったような気がしました。そこから、馬との生活がどんどん自分の中に入ってきて、レッスンがある日が待ち遠しくてたまらなくなりました」

――レッスンではどんなことを学ばれたんですか?
「平日に通って、まずは基本的な手入れや接し方を学びました。馬房に入る前の挨拶の仕方や、ブラッシングの順番、足の裏を洗うときのコツなど、覚えることがたくさんあって。でもどれも、馬と仲良くなるために必要なことなんだと思うと、全てが楽しかったです。ただ、すぐに壁にぶつかりました。初めての駆け足のレッスンで、スピードに乗った瞬間、恐怖心が出てしまって、体が硬直してしまったんです。そこから少しずつ怖いという感情が芽生えてしまって...」
――その頃、大きな怪我も経験されたんですよね
「そうなんです。小学6年生の時、個人レッスン中に馬が急に跳ねてしまって。私は反応が遅れてしまって、空中でくるんと回って、そのまま右肩から落下してしまいました。右肩を骨折してしまって、その瞬間は本当に痛かったし、『もう乗れないかもしれない』と思うくらい怖かったです。ちょうど卒業アルバムの時期だったんですが、腕が上がらなくて、制服も着られず、合成で写真に入れてもらいました(笑)。当時はすごくショックでしたけど、今では笑える思い出ですね」

――その恐怖心をどうやって乗り越えたんですか?
「一人では絶対に無理だったと思います。母が本当に支えてくれて、『また楽しく乗れるようになってほしい』って、いろんな乗馬クラブを一緒に回ってくれて。先生にも相談して、少しずつ怖くないという感覚を取り戻せるよう、いろんな方法を試しました。その中で出会ったのが馬場馬術だったんです。初めてその演技を見たときに、『こんなに美しい世界があるんだ』と衝撃を受けて。走るスピードよりも、馬との精密なコンビネーションや、優雅な動きが求められる競技。これなら自分のペースで、馬と丁寧に向き合えるかもしれないと思って、すぐに惹かれました」
――馬場馬術に取り組み始めてから、競技にも出場されていたそうですね。
「はい。最初はただ『もう一度、馬と向き合いたい』という気持ちだけだったんですけど、練習を重ねていくうちに、少しずつ先生から『大会に出てみない?』と声をかけてもらうようになって。初めて大会に出たときは、緊張でガチガチでした(笑)。いつも通りに馬にまたがっているはずなのに、会場の空気や観客の視線を感じてしまって...。でも、演技を始めてすぐに今はこの子と2人だけの時間なんだと気持ちを切り替えられたんです。馬の温かさや、リズムに呼吸を合わせていく感覚。あの瞬間は本当に特別でした」
――大会を重ねていく中で、成長を実感することもありましたか?
「ありました。毎回の大会ごとに、小さな課題が見えてきて、『次はここを直したい』『もう少し落ち着いて指示が出せるようになろう』って自分の中で目標が生まれてくるんです。それをひとつずつ乗り越えていくことで、自信もついてきましたし、何より馬と自分の信頼関係が深まっていくのが分かるようになってきたんです」

――大学に進学されてからも、馬術は続けていたんですよね?
「大学に入ってからも、1年生のうちはしっかりと競技に取り組んでいました。もちろん学業との両立は大変でしたけれど、授業の合間や休日を使って乗馬クラブに通っていました。授業が終わると急いで着替えて、クラブに向かって、馬房の前で『今日もよろしくね』って声をかけてから練習を始める。それが当たり前の日常でした」
――グループでの芸能活動と並行していた時期もあったと思います
「そうなんです。大学2年生からは、アイドルグループの活動も本格的に始まって、だんだん競技の大会に出るのが難しくなっていって。でも、完全にやめることはできなかったんです。それくらい馬との時間が大切で。だから、少しでも時間があれば馬に会いに行って、ブラッシングをしたり、馬房の掃除を手伝ったりしていました。あの頃は本当に忙しくて、朝から夜までスケジュールが詰まっている中で、それでも馬に触れると不思議と心が落ち着いて、『あ、私ここに帰ってきたんだな』って感じられたんです。馬って、そういう癒しの力を持っているんですよね」

――これまで出会った中で、特に印象に残っている馬はいますか?
「たくさんいますが、やっぱりバッカスという馬との思い出は特別です。初めて自分に割り当てられたパートナーで、個人の競技にも一緒に出場しました。バッカスはとにかく力が強くて、最初は振り回されるような感覚がありました。でも、彼にはすごく可愛らしい一面もあって。出っ歯で、ちょっと間抜けに見えるんですけど、それがまたたまらなく愛おしくて(笑)。初めて無口(馬を誘導するための道具)を自分専用に買ってもらって、それをバッカスにつけてクラブ内を移動したときは特別な感覚がありましたね。彼の馬房の前に立つだけで、気配を感じてくれるようになって。お互いの呼吸が合っていく感じが、嬉しくてたまらなかったです」
――信頼関係というのは具体的にどういう瞬間に感じるものなんでしょうか?
「たとえば、バッカスが少し不機嫌な日でも、私が近づくと表情が和らいだり、指示に対してすぐに反応してくれたり。『今日はちゃんと伝わってるな』と感じる瞬間があって、そういうときってすごく感動するんですよね。逆に、私の気持ちがフワッとしているときは、明らかに言うことを聞いてくれなかったりして(笑)。馬って、人の内面をすごく敏感に感じ取っているんだと思います。だからこそ、毎回真剣に向き合わなきゃいけない。そこが奥深いし、魅力でもあります」
――競技生活で得たものは、今のご自身にも生きていますか?
「はい、間違いなくあると思います。集中力や瞬時の判断力はもちろんですが、相手の立場になって考える力は、馬と向き合う中で自然と養われていったと思います。あと、バッカス以外にも、馬ごとに性格が全然違っていて。いたずら好きな子、繊細な子、すごく頑固な子がいて、その一人ひとりに合わせた接し方を学ぶことは、人との関係にも通じる部分がすごくあると思います」

――他にも忘れられない馬とのエピソードがあれば教えてください
「ヴォルフラムという馬との出会いも、とても印象深いです。彼は外国産の大きな馬で、最初は『こんなパワーのある馬、女の子が乗れるの?』って言われたくらいでした。でも、何度も挑戦して、少しずつ彼のリズムを理解して、心を通わせていけるようになって。その馬と一緒に出場した全国大会で、準優勝することができたんです。あの瞬間は、乗馬を続けてきて本当によかったと思いましたし、バッカスから始まった馬との信頼が、確かに形になったような気がしました」
――そこから、競馬番組への出演という形で、新しい"馬との関わり方"が始まったんですね
「グループを卒業したあとに、『競馬BEAT』にMCとして出演させていただくことになって。最初は正直、プレッシャーも大きかったです。競馬は、ファンの方々の知識が本当に深くて、情報量もすごいんです。そんな中で、自分がどれだけ役割を果たせるんだろうって。でも、やっぱり馬が好きという気持ちは本物だったから、そこに自信を持って、まずは自分なりにできることから一歩ずつ積み重ねようと思いました。分からないことは正直に教えてくださいと聞くようにして、専門家の方々やファンの皆さんから学びながら、毎週の放送に臨みました」
――初めて競馬場でレースを見たときのことは覚えていますか?
「覚えています。初めて競馬のレースを見た(馬券を購入した)のが桜花賞のときで、櫻坂46の"櫻"と重なって、なんだかご縁を感じて注目していたレースでした。中央競馬はそのときが初めてで、パドックで馬を見たとき、その迫力や気配に圧倒されたんです。『この子たちが今からあの広いコースを走るんだ』と思ったら、自然と胸が高鳴っていました」
――レース観戦を通して、馬への想いに変化はありましたか?
「競馬の世界に入って、乗馬とはまた違う形で馬と人間の関係性を見るようになりました。ジョッキーの方々、調教師の方々、厩務員さんたち。それぞれがすごく強い情熱と責任感を持って馬と向き合っていて。最初は『どうしてこの馬が人気なんだろう?』『調教って何を見ればいいの?』と分からないことだらけでしたけど、実際にトレセンや厩舎に取材に行かせてもらったときに、皆さんの馬への愛情がすごく伝わってきて、この仕事に携わらせてもらってよかったと心から思いました。そして、自分がやってきた乗馬や馬術と根本にある"馬へのリスペクト"は共通しているなと感じて。だからこそ、乗馬で培ってきた経験を、少しでも競馬番組の中で活かしていきたいと思っています」

――印象に残っているレースや馬はいますか?
「やっぱりリバティアイランドとイクイノックスですね。リバティアイランドが牝馬三冠を達成した姿には、鳥肌が立ちましたし、女性としてもすごく励まされました。イクイノックスは、もう本当に次元が違うという印象で、まるで神話の中の存在みたいでした。引退後、実際にイクイノックスに会いに行く機会があったのですが、馬体の美しさ、毛並みの艶、そして目の奥の深さ...どれをとっても、言葉にできないくらい感動しました。左右で表情の違う目も印象的で、特に片方は三白眼ぎみで、その眼差しが本当に力強くて。今でも彼のマスコットをリュックにぶら下げて、競馬場に持って行っています(笑)」
――いつも一緒にいるんですね(笑)。馬のどんな仕草やパーツが好きですか?
「たくさんあるんですけど、やっぱり一番は"顎のぷにぷに"ですね(笑)。あそこって馬によって触り心地が違っていて、筋肉質でしっかりしている子もいれば、ふにゃっと柔らかい子もいたりして。触れるたびに『この子はどんな性格かな?』って観察するのが楽しいんです。あと、香りも好きです。馬って人間より体温が高いので、ブラッシングしているときに背中やお腹にそっと顔を寄せると、ぽかぽかしていて、独特の香りがふわっとして。それがとても安心できるんです。忙しい日々の中で、そういうほっとする時間があることに、すごく救われていました」
――最後に、これからの馬との関わり方や夢を聞かせてください
「これからも、ずっと馬と関わっていきたいです。競技者としての形ではなくなったけれど、メディアを通してでも、馬の魅力や、馬と生きる人たちの努力や思いを伝えていける存在でありたいと思っています。最近では、ホースセラピーの分野にも興味があって。心や身体に不調を抱えた方が馬とのふれあいで癒されるという取り組みを、もっと広めていけたらいいなと。自分の経験が、少しでもそういう活動の役に立てたら嬉しいです。そして何より、今この瞬間も人間のために走ってくれている馬たちが、みんな幸せに過ごせますように。そのために、自分にできることを探しながら、これからも馬と共に歩んでいきたいと思います」

取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
ヘアメイク=カワムラ ノゾミ
スタイリスト=福田亜由美
衣装
カーディガン ¥8,690 (リリアンカラット / 03-4578-3338)
スカート ¥12,100 (ココ ディール / 03-4578-3421)
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