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小野大輔&釘宮理恵『黒執事 -緑の魔女編-』での役作りを語る

2025.5.3(土)

『黒執事 -緑の魔女編-』小野大輔が演じたセバスチャン
『黒執事 -緑の魔女編-』小野大輔が演じたセバスチャン

全世界のファンを魅了し続ける、枢やなによる漫画『黒執事』(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)。

そのアニメ新シリーズ『黒執事 -緑の魔女編-』が2025年4月5日より放送をスタートさせ、話題を呼んでいる。

今回はセバスチャン役として本作を牽引し続ける小野大輔と、『緑の魔女編』のキーパーソンの1人を務める、ジークリンデ・サリヴァン役の釘宮理恵にインタビュー。『黒執事』シリーズで共演することになった気持ちを、今一度語ってもらった。

――『緑の魔女編』が始まると聞いたときのお気持ちは?

小野「『緑の魔女編』は僕自身、シリーズの中で1番好きなシリーズということもあって、役者としてもファンとしてもすごく嬉しかったです。今の自分のキャリアやスキルで、1番好きなシリーズを演じられるんだって。本作では過去に縛られて精神的にどん底まで追い込まれてしまうシエルを、セバスチャンが叱咤激励するようなシーンがあるんです。激励というよりはほとんど叱咤なんですけど。実はそのシーンをずっと演じたかったんです。それだけ厳しい言葉をシエルにかけるのはそのシーンが初めてですから。そこを初めて読んだ時に"ここまで積み重ねてきたものがあるから、絶対にうまく演じられるはずだ!役者として早く演じたい!"と思ったのを覚えています」

釘宮「私は今回出演するまで『黒執事』と接点がなかったんです。でも、自分の芸歴と共に過ごしてきた作品タイトルの1つなので、接点がないながら、勝手に長年一緒にやってきたような感覚はありました。だからこそ、まさかその作品に自分が参加できるとは思ってもみなかったので"なんて嬉しいハプニングが起こったんだろう"と思いました。オーディションで決まったわけではなかったので」

小野「オーディションなかったんだ!?」

釘宮「そうなの!」

小野「ロサンゼルスで開催された「Anime Expo2024」に『寄宿学校編』のイベントで行ったときに岡田監督から"今キャスティングが佳境です"って聞いていて。その時点で僕はくぎみーの名前を内密に聞いて "マジか!間違いないじゃん"って思ったんだよね。というのも、僕は正直、原作を読んでいたときに、頭で再生されていたのが、くぎみーの声だったから」

釘宮「そう言ってもらえるのは、すごく嬉しいな!」

――小野さんからは"間違いない!"との意見がございましたが、釘宮さんはサリヴァンをどのように演じようと思いましたか?

釘宮「初登場のシーンを演じてみたときに、自分が思っていたよりも、もうちょっと大人っぽく年齢感を上げて、と言っていただいたのでそれを軸にお芝居を展開させていこうかなと思いました。それから、普段は役をいただいたら原作から入るタイプなんですけど、今回はあえて先まで知らない状態で臨んだんです。自分の身に訪れる状況に対して、毎回新鮮にリアクションをとっていきたいなと思ったので。こういうやり方をしたのは、初めてな気もします」

『黒執事 -緑の魔女編-』釘宮理恵が演じたジークリンデ・サリヴァン
『黒執事 -緑の魔女編-』釘宮理恵が演じたジークリンデ・サリヴァン

――あえて先まで読まないやり方をしてみて、どうでしたか?

釘宮「毎回翻弄されて、気持ちが忙しなかったです。すごく楽しい時間を持てたと思ったら、どん底に突き落とされるようなこともあって。人間不信になったり、周りはアクションをしている中で自分は思うように動けないみたいなところもあったり...。思った以上に新鮮に感じることができたかなと思います」

――小野さんは15年以上、セバスチャンという役をやってきました。役に対して変わらないスタンス、変化したことがあれば教えてください

小野「変わったと言えば、やっぱり低音が出しやすくなりました。声優の声帯って楽器でもあるので、衰えることなく、より鳴りやすくなっているということにありがたさを感じています。だからこそ、もう1回『黒執事』のテレビシリーズをやっていいよと言われたことがご褒美だったんです。今だったらもっとうまくできる、と。逆に変わらないことは、ずっと引き算をしていることだと思います。第1期の初めてのアフレコの際は、本当に何回も何回も"イエス、マイロード(Yes,my lord)"をやり直しました。感情を乗せないで、とずっと言われ続けて。淡々と低く低く...。 "これは演技ではなく音を出しているだけじゃないか"と追い込まれてしまった時期もありました。でも、考えているうちに"引き算の美学なんだ"と気づいたんです。引くことって、お芝居を足すよりも少し勇気がいることで、これで成立するのかとか、表現できてないんじゃないかって。でも、自分が引いたものを誰かが足してくれるから、勇気を持って引こうと。執事の存在もそうなんですよね。主人より絶対前に出ない、引いている。その引き算の美学は、今回もすごく意識しています。緑の主従がすごく熱量を足してくれる。だからこそもっと引けるし、クールにドライにできるんです。」

――もともと釘宮さんは『黒執事』に対して、どのようなイメージを持たれていましたか?

釘宮「実は原作の内容までは知らなかったのですが、タイトルのロゴが美しくて、耽美な世界なんだろうなと。このロゴに作品全体に通じている美学が現れているんだろうと考えていました」

小野「まんまと...してやったりって感じですね。パッと見はゴシックで、暗くて美しいスタイリッシュな世界がこの作品の根幹にはあると思うのですが、裏側はすっごい泥臭くて、血も汗も流す人間ドラマが繰り広げられるというギャップがこの作品の魅力だと思います。特に『緑の魔女編』は、人間は愚かだけど、それゆえに一生懸命生きるから美しいみたいなところを描いていて、1番そのギャップが出ているシリーズだと個人的には思っています。なので、くぎみーのファーストインプレッションで入って、先も読まずにやっていったというのは、全部うまくいっているなと思います」

『黒執事 -緑の魔女編-』
『黒執事 -緑の魔女編-』

――アフレコの時に印象的だったことを教えてください

小野「健康について話していました(笑)」

釘宮「本当、収録時期が冬だったこともあって"みんなで体調に気をつけて乗り切ろうね"って」

小野「その時にくぎみーが言っていたんだよね。"人生百年時代だから!まだ全然半分もいってないから"って」

釘宮「そうなの、長いから。先が」

小野「だから健康に気をつけないといけないなと思った。僕とか真綾ちゃんは感銘を受けたんだよね。この先また『黒執事』があったとしたら演じたいじゃないですか。もちろん新しい人が継いでくれてもいいのですが、できる限りは『黒執事』をやりたいなと思っています。だから、その時に技術云々の前に、健康でないと演じることができないという話を聞いて、なるほどなって」

――釘宮さんが"百年時代だから"っておっしゃったのは、仕事を長く続けたいという思いから?

釘宮「というよりは、お仕事があるかないかに関わらず、100歳まで生きるとしたら、楽しく生きるためには健康寿命が長くなくちゃいけないなと。だから、できる限り健康でいられる期間を伸ばしつつ、生きていこうと思って日々生きているんです!すみません、こんなことを熱く語っちゃって」

小野「でも、こういう話ができたのは、4人でほぼ一緒に録ってたからだと思うんだよね。それって、意外と当たり前じゃないのかもしれないなと思うから、貴重だったなとも思う」

釘宮「確かに。最近は個別に取ることも多いからね!」

――最後に今回の『緑の魔女編』から見たいという人にメッセージをお願いします

小野「シエルの過去が本格的に語られていて、さらにフィニアンの過去も、そこに絡んでくると。だから実は最初から読んでいた方々も『緑の魔女編』で初めて知ることが多いと思うんです。そういう意味では、今から入ってきても何も遅いことはないです。さらに言うと、セバスチャンとシエルっていうクールな主従関係と、サリヴァンとヴォルフラムの熱くピュアな主従関係の対比がものすごく鮮やかに表れているシリーズなので、そこを楽しむだけでも良いと思います」

釘宮「歴史が長い作品ゆえに"今から参加していいの?"って、ためらう気持ちもすごく分かるのですが『緑の魔女編』だけで成立している部分も大きいので、ここから見ていただいても楽しんでいただけると思います。それに、小野Dが言ったように、シエルとフィニアンの過去やセバスチャンとの関係性、世界観がすごく素敵なので、絶対深掘りしたくなると思います。なので、『緑の魔女編』を見たあとでほかのシリーズを深掘っていく楽しみも後に控えていると思いながら、見ていただけたらと思います」

ヴォルフラム役・小林親弘へのインタビューはこちら
シエル・ファントムハイヴ役・坂本真綾へのインタビューはこちら

取材・文=於ありさ

作品情報

アニメ『黒執事 -緑の魔女編-』
毎週(土) 23:40〜TOKYO MXほかにて放送中!