紅ゆずるが落語ミュージカル「ANOTHER WORLD」で見せるコメディアンな一面!
2025.4.30(水)

「落語ミュージカル」と銘打たれた星組公演「ANOTHER WORLD」は、何と死後の世界が舞台となっている。作・演出は谷正純。落語の舞台化を得意としてきた彼がいつかやりたいと思っていた作品だそうだ。
大阪の両替商の若旦那・康次郎(紅ゆずる)と菓子屋の嬢(いと)さん・お澄(綺咲愛里)は互いに一目惚れするが、恋煩いのあまり二人とも死んでしまう。冥途で康次郎が出会ったのは、江戸の米問屋の若主人・徳三郎(礼真琴)の一行。現世で遊び尽くしたので、もっと刺激的な遊びを求め、フグの毒を食らって冥途に来たという。意気投合した二人とその仲間たちによる冥途珍道中が始まる。果たして康次郎はお澄と再会し、恋を成就できるのか?
何とも破天荒なストーリーだが、じつは落語がベースになっている。全体構成は「地獄八景亡者戯」をもとにしつつ、康次郎とお澄の純愛物語は「朝友」から取っている。この他、「崇徳院」「死ぬなら今」という噺も題材としている。
「地獄八景亡者戯」は上方落語であり、滅多に上演されることのない大長編である。それだけに、大人数が登場し、衣装もセットも豪華絢爛なタカラヅカで舞台化するに相応しい題材のように思える。
とにかく登場人物の個性が際立っている。主人公の康次郎(紅ゆずる)は一見ヘタレなぼんぼんだが、その行動は筋が通っており、ここぞという時には爆発的なパワーを発揮する。関西出身でコメディを得意とした紅の本領が如何なく発揮されるキャラクターだ。ヒロインのお澄(綺咲)もまた、虫も殺さぬお嬢様のようでいて、強烈な素顔を隠し持っている。
冥途で康次郎の相棒となる徳三郎を演じるのが、このたび惜しまれながら退団する現・星組のトップスター礼真琴だ。粋な色男だが、肝心なところがちょっとヌケているのが可愛らしい。昨年、大好評を博した「記憶にございません!」の黒田総理役でも発揮された礼の三枚目の魅力が、本作でも垣間見える。康次郎のはんなりとした風情に対する、徳三郎の江戸っ子らしい気風の良さも好対照。フグ紋で揃えた徳三郎一行の衣装も必見だ。
5日間放置した鯖を食べて冥途に来た喜六(七海ひろき)は間抜けすぎてお茶目だし、「めいど・かふぇ」の看板娘である初音(有沙瞳)は髪を染めたヤンキー娘である。「業界若手」の奪衣婆(だつえのばば)・艶冶(音波みのり)は、現世ではタカラヅカでもお馴染みの傾国の美女だったらしいし、赤鬼赤太郎(瀬央ゆりあ)は一場面だけで爪痕を残していく。同じく落語を題材とした作品である「くらわんか」でもおなじみ、ビンちゃんこと貧乏神(華形ひかる)も登場する。極め付けは「冥途歌劇団」のスター(美稀千種)の味わいだろう。
生と隣り合わせの死の世界が身近なものに感じられ、同時に「生きること」が愛おしくも感じられてくる。本年4月に逝去された谷を偲び、「谷先生もきっと冥途歌劇団で活躍されているのだろう」と、思いを馳せたくなる作品である。
文=中本千晶
放送情報【スカパー!】
ANOTHER WORLD('18年星組・宝塚)
放送日時:5月23日(金)23:30~
放送チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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