草笛光子が90歳で再び輝く作家を熱演!映画「九十歳。何がめでたい」
2025.4.21(月)

長生きするってどういうことだろう。いろいろなものが見えてきて楽しいのかな。それとも、辛いのかな。多くの人が一度は考えたことがある疑問のひとつの答えを教えてくれる作品が映画「九十歳。何がめでたい」だ。
断筆宣言をした90歳の作家・佐藤愛子(草笛光子)は毎日一人で家に閉じこもって、新聞やテレビを眺める時間が続いていた。周りから見れば元気でも、何かを始めるほどの体力やバイタリティはない。彼女が募らせていく孤独は娘や孫にはわからず、愛子は「九十歳。何がめでたい」とぼやく。
同じ頃、大手出版社に勤める中年編集者・吉川真也(唐沢寿明)は、昭和気質なコミュニケーションが社内で問題となり、別の部署へ飛ばされることになっていた。その編集部で愛子のエッセイ連載が企画に上がり、吉川が苦労の末に口説き落として担当編集となるのだった。

(C)2024 映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (C)佐藤愛子/小学館
吉川のコミュニケーションは現代の若者から見ればかなり時代錯誤で鬱陶しい。大声は威圧的だし、説教気質は誰が見ても一発アウトだ。年長者の愛子からしていてもそれは同じはずなのだが、丁々発止のやり取りを続けていくうちに不思議と元気を取り戻していく。言い返したり、一緒に何かを考えているうちにまるで若返っていくようにも見えてくる。
吉川との二人三脚で生み出される愛子のエッセイも珠玉の逸品だ。子供の騒音問題についてや飼い犬との思い出のエピソードなどは胸にじわりと沁み込み、考えるきっかけをも与えられる。映像を通して、自然と原作である『九十歳。何がめでたい』と『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』に興味が湧き、読みたくなってくるのは自然な感情だろう。

(C)2024 映画「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (C)佐藤愛子/小学館
そんな魅力的な愛子は草笛光子でしか成り立たなかったであろう。先日の、日本アカデミー賞でも麗しい姿を披露したばかりだったが、御年91歳。つまり90歳が90歳の役を演じたということだ。それだけでもとてつもないことだとわかるが、作品の中での草笛は自然体に見せる。
吉川に意地悪に対応してみたり、独り言をつぶやいてみたり、ともすればお芝居感が強くなっていくようなシーンでもどこにでもいるような老人としての振る舞いに感じられる。余計な力が入っていないのは、90歳として等身大の自分を見せようとしているからではないのだろうか。
一方で、その美しさは作品内でも健在。この歳になってもこれだけ気高く、品があるように見えるというのは驚きであり、勇気でもある。作品を通して同年代の高齢者には響くテーマとなっていたはずだが、単純にビジュアルにおいても力を与えたものだったことは間違いない。
映画の中でもエッセイ集として発売された『九十歳。何がめでたい』が大ヒットを巻き起こす。あらゆる人が場所を選ばず、同じ本を読んでいるのは狂気的でもあるのだが、多くの人が老後の生き方に悩んでいるという証明でもある。
愛子は同世代に向けて「のんびりしようなんて考えてはだめ」と言い放つ。世の中に反応し続けることが力となり、生きがいとなるとも。それこそが長生きの秘訣であり、老後も退屈せず楽しめる方法なのかと気付かされる。
もっとも、愛子が語ったように人生を送るうえで一番大切なことなんて「知らん」。言い換えれば、人それぞれであり、それは自分自身で考えるべき問題だ。
それでも、愛子のような生き方はひとつの指針となり、老後の生き方を明るく照らす。映画の中の愛子はフィクションだったとしても、実在する草笛光子が今なおかっこよくて、美しくいてくれることが何よりの救いだ。
文=まっつ
放送情報
九十歳。何がめでたい
放送日時:2025年4月26日(土) 16:15~ ほか
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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