ヘレン・ミレンが魅せるヴィランの新境地 「シャザム!~神々の怒り~」が描く複雑な悪役像
2025.4.4(金)
英国王室からスーパーヒーローの宿敵まで、その卓越した演技力で観客を魅了し続ける名優、ヘレン・ミレン。アカデミー賞主演女優賞をはじめ、数々の栄誉に輝く彼女は、映画、テレビ、舞台と幅広い分野でその存在感を示してきた。そんな彼女が、映画専門チャンネル ムービープラスで放送される「シャザム!~神々の怒り~」で、神話に登場する強大な女神ヘスペラを演じている。
「シャザム!~神々の怒り~」 © 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved ™ & © DC
ヘスペラはアトラス神の長女であり、妹のカリプソ(ルーシー・リュー)、アンテア(レイチェル・ゼグラー)と共に主人公シャザムたちが秘めた神々の力を奪還し、自分たちの領域を復活させることを目論む。ミレンは、この一見すると典型的なヴィランの役柄に、自身が培ってきた演技の深みを注ぎ込んでいる。彼女の演じるヘスペラは単純な悪役ではなく、女神としての誇りや正義感に基づき、自らの正当性を信じて行動する。その複雑で説得力ある演技は、物語に立体感を与えているのだ。
ミレンの演技で特に注目したいのは、彼女がキャラクターの内面性だけでなく、身体性を伴ったアクションにも積極的に挑んでいる点だ。70代後半という年齢にも関わらず、彼女はスタントシーンの多くを自ら演じることを望み、撮影中には指を骨折するというハプニングも起きている。しかし彼女自身はこれを「名誉ある勲章」と表現し、映画に対する真摯な姿勢とプロ意識を鮮やかに示している。
これまでのミレンのキャリアを振り返れば、その演技の幅広さと深さに驚かされる。歴史的実在の人物からアクション映画、ファンタジー作品まで、ジャンルを問わず役を自分のものにしてきた。例えば、「エクスカリバー」でのモルガナ役や「RED/レッド」シリーズでのMI6の元スパイ・ヴィクトリア役、「ワイルド・スピード」シリーズでのクイーニー・ショウ役など、ジャンルを横断しながら常に作品の核となる魅力的なキャラクターを創り上げてきたのだ。
「シャザム!~神々の怒り~」 © 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved ™ & © DC
今回の「シャザム!~神々の怒り~」においても、ミレンは神話の世界から飛び出してきたかのような威厳を湛えながら、ヴィランという枠を超え、観客がどこか共感できるような普遍的なキャラクターを造形している。彼女の演じるヘスペラは、その圧倒的な存在感によって、物語全体にある種の緊張感と重厚さを与えている。ビリー・バットソン(シャザム)をはじめとする若いヒーローたちとの対峙シーンでは、その凛とした佇まいと迫力ある演技が際立ち、映画全体のトーンを引き締める役割も果たしているのが印象的だ。
また、本作ではミレンがルーシー・リュー、レイチェル・ゼグラーという実力派俳優たちと共演していることも見逃せない。三姉妹の関係性は物語の中心的要素のひとつであり、ミレンを軸に織りなされる家族のダイナミクスは、単なるスーパーヒーロー映画を超え、家族の絆や葛藤といった普遍的なテーマへと視野を広げている。ヘスペラが妹たちをリードする際のミレンの演技は、厳しさの中に垣間見える慈愛や優しさを感じさせ、ヴィランでありながら観客がどこか憎めない人物像を作り出すことに成功している。
「シャザム!~神々の怒り~」 © 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved ™ & © DC
「シャザム!~神々の怒り~」というスーパーヒーロー映画において、ミレンの存在感はひとつの特別な輝きを放っている。彼女がヴィランとして映画にもたらした深みと気品は、このジャンルが抱えがちな単純な勧善懲悪の枠組みを超えていく力を持っている。スーパーヒーロー映画にあって、これほどまでに威厳に満ちたヴィランを演じられる俳優はそう多くない。
今回、ムービープラスでの放送を通じて「シャザム!~神々の怒り~」に触れる視聴者は、ぜひミレンが紡ぎ出す女神ヘスペラの堂々とした立ち姿に注目してほしい。その演技の深み、身体を張ったアクション、そしてキャラクターへの真摯なアプローチは、これまでスーパーヒーロー映画が描いてきたヴィラン像を確実にアップデートするものとなるはずだ。ヘレン・ミレンがスクリーンに刻みつけた新たな伝説に、改めて目を向けたい。
文=川崎龍也
放送情報【スカパー!】
「シャザム!」
放送日時:2025年4月5日(土)18:30~
「シャザム!~神々の怒り~」
放送日時:2025年4月5日(土)20:56~
チャンネル:ムービープラス
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