西島秀俊が漂わせる色気と哀愁...人間の多面性を表現した「グッバイ・クルエル・ワールド」
2023.6.8(木)
第94回アカデミー賞国際長編映画賞の快挙を成し遂げた濱口竜介監督作「ドライブ・マイ・カー」(2021年)で、妻を失った男の苦悩と再生を静かに、そして生々しく体現して世界にその名を轟かせた俳優、西島秀俊。
年齢を重ねるごとに円熟味と色気を増し、映画やドラマに引っ張りだこだ。「シン・ウルトラマン」(2022年)では防衛チームをまとめる班長を好演し、第76回カンヌ国際映画祭で初お披露目となった「首」では、敬愛する北野武監督と再タッグを組み、明智光秀役にチャレンジ。
内野聖陽と息ぴったりにカップルを演じた「きのう何食べた?」シリーズは、シーズン2の放送決定が発表されるやSNS上に歓喜の声があふれるなど、ジャンルを問わずバラエティに富んだ作品に出演し、それぞれが大きな話題を呼んでいる。西島は今もっともノリに乗っている俳優の一人と言って、間違いないだろう。
(C)2022「グッバイ・クルエル・ワールド」製作委員会
そんな西島の近作の中でも、エンタメ色が強い作品となったのが大森立嗣監督による「グッバイ・クルエル・ワールド」(2022年)だ。ヤクザの手下たちが大金の資金洗浄をしているラブホテルに、目出し帽で顔を隠した一味が押し入り、大金を奪って去る...というのっけからソウルナンバーに乗せたクールかつ、生々しいバイオレンスが炸裂する本作。
強奪犯の一味は年長の浜田(三浦友和)をボスとした、互いに素性を知らない面々。金の匂いに群がった個性的&ワケアリ感満載のメンバーによるやり取り、次第に彼らの事情が明らかになる展開も見応えがあり、潰し合うように破滅へと向かう様子に目を奪われる。
西島が演じるのは、強奪犯の一員となる安西役。強奪の場面で安西はどこか悲しそうな眼差しを見せ、観ているこちらも「一体この人の背景に何があるのだろう」と思わせる佇まいをしている。
実は安西は、凶暴な顔を隠した元暴力団員。更生して家族と静かに暮らしたいと望み、生活を立て直すための資金を欲しているが、奥野瑛太演じる元舎弟が脅しに来たりと、過去がいつまでも付きまとってくる。妻や娘に見せる優しい笑顔とは裏腹に、舎弟の前では元ヤクザとしての凄みと迫力をたっぷりとにじませ、人間の多面性を見事に表現。色気と哀愁を漂わせながら、行き場所の見つからない男の葛藤を演じ切った。
(C)2022「グッバイ・クルエル・ワールド」製作委員会
また一味を演じるメンバーは、他にも豪華な俳優陣が顔を揃えている。闇金業者の萩原を演じたのは斎藤工。とことん暴力的な男として、斎藤がワルな魅力をぎらつかせている。資金情報をリークするラブホテルの従業員・矢野を演じたのが宮沢氷魚。矢野は、玉城ティナ演じる風俗嬢・美流と思いを寄せ合う役どころだ。宮沢と玉城のみずみずしさとピュアさ、そして儚さは、壮絶なバイオレンスの中でキラキラとした光を放つ。
また、一味のボス・浜田を演じた三浦友和の存在感も圧巻だ。コミカルなセリフの中に社会への怒りや悔しさまでを加えるなど、惚れ惚れとするような芝居を披露している。
一味のメンバー以外にも奥田瑛二、鶴見辰吾らベテラン俳優陣、奥野瑛太ら実力派がズラリ。「まほろ駅前多田便利軒」(2011年)や「日日是好日」(2018年)で知られる大森監督がシビれるようなガンアクションにも挑戦しており、大森監督の新境地という意味でも見逃せない1作となっている。
文=成田おり枝
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