中村倫也が俳優デビューし、渡辺いっけいが怪演を見せた「七人の弔」は、子を虐待する親をシニカルに描いた異色作
2023.3.16(木)
普段は別々の土地で生活している人たちが、なんらかの事情でひとつの場所に集まり、共同生活をするうちに恐ろしいことが起こる...。海外映画の「ミッドサマー」や「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」、日本映画の「犬鳴村」シリーズなど、ホラー映画の定番といえるシチュエーション。お笑い芸人のダンカンが監督した2005年公開の「七人の弔」も、ホラーではないが、そんな設定の映画だ。児童虐待、裏社会での取引などを題材にしながらキャンプ場での出来事をシニカルかつコミカルに描き、話題になった作品の1つだ。
(C)2004『七人の弔』製作委員会
夏休み、山間のキャンプ場に集まった7組の家族。競馬好きの父親・河原功一(渡辺いっけい)と10代の息子・潤平(中村友也、※現在は中村倫也)も、そのメンバーであり、普段は潤平を殴っている功一だが、なぜかキャンプでは潤平に反抗されても手を出そうとしない。中尾君代(高橋ひとみ)も、自宅では「色気づいている」として娘の晴美(川原真琴)をなじり暴力を振るっているが、キャンプでは大げさなほどに娘がケガをしないか心配する。そして、キャンプの指導員だという垣内仁(ダンカン)は親たちを集め、子どもたちについて恐るべき契約を交わそうとする。
中村倫也はこれが俳優デビュー作。18歳のときの作品だが、ティーン独特の反発心と親に虐げられてきた悔しさを抱える潤平を好演。演技巧者で知られるベテランの渡辺いっけいを相手に、堂々とわたり合い、ポテンシャルの高さを感じさせる。最近の出演作、映画「ハケンアニメ!」やドラマ「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」のように自由自在に演じている感じは、このときまだないが、演技に柔軟性があり、間の取り方なども上手い。当時、期待の新人だと騒がれたのも納得だ。
(C)2004『七人の弔』製作委員会
一方、渡辺いっけいは、ギャンブルに熱中し、他の子の母親(いしのようこ)を無理やりものにしようとする、欲望丸出しの男をリアルに演じている。功一は間違いなく悪い父親なのだが、人間くさくて弱みもあり、全否定できない魅力があるのは、渡辺が演じているからこそ。そんな功一が、最終的に息子を自分の犠牲にするかどうかも見どころだ。
中村演じる潤平を始め、集まった7人の子どもたちが自宅で虐待されていたときの回想シーンや、キャンプ場での親たちの身勝手な振る舞いは見ていて辛いのだが、潤平が子どもたちをまとめ、実の親に売られそうになっているという理不尽な状況をひっくり返そうとする展開には、胸が熱くなる。衝撃のラストまで目が離せない異色作だ。
文=小田慶子
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